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システム開発ニュース

Vol.34 Webブラウザで実現する大規模点群データの可視化と活用

本連載は、「システム開発」をテーマとしたコーナーです。フォーラムエイトのシステム開発の実績にもとづいて、毎回さまざまなトピックを紹介していきます。今回は、大規模な点群データをWebブラウザ上で可視化・活用する技術についてご紹介します。

はじめに

近年、レーザースキャナやLiDARの普及により、都市や建造物、インフラなどの空間情報を点群データとして取得する機会が急速に増えています。点群データは3次元空間上に配置された多数の点によって対象物の形状を表現するデータ形式であり、建設・測量・インフラ維持管理・自動運転など、さまざまな分野で活用が進んでいます。現実空間を高精度にデジタル化できることから、現場状況の把握やシミュレーション、設備管理などにおいて重要な役割を担っています。

しかし点群データの活用において大きな課題となるのが、その膨大なデータ量です。点群データは数百万点から数億点規模になることも多く、データ容量も数GBから数十GBに達する場合があります。そのため従来は、高性能GPUを備えたPCと専用ソフトウェアによる処理が必要とされていました。

フォーラムエイトではUC-win/Roadによる3次元可視化・シミュレーション技術を活用し、点群データの活用を進めてきました。しかし、より多くの関係者が環境に依存せずデータを共有・閲覧できる仕組みが求められていました。

近年、Webブラウザ技術の進化により、この状況は大きく変化しています。GPUを利用した高速描画技術やデータ配信技術の発展によって、ブラウザ上でも大規模な3次元データを扱うことが可能になりました。これにより、専用ソフトウェアを必要とせず、Webを通じて点群データを共有・可視化する新しい利用環境が実現しています。

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図1 Webブラウザによる大規模点群データ表示例

Webブラウザで点群データを扱う技術

Web上で大量の点群データを表示するためには、いくつかの重要な技術が組み合わされています。

まず、WebGLやWebGPUといったブラウザ描画技術の進化により、GPUを利用した高速な3次元描画が可能となりました。これによりブラウザ環境でもリアルタイムに近い3次元表示を行うことができます。

さらに重要な技術としてLOD(Level of Detail)があります。これは視点の距離に応じて表示するデータの解像度を切り替える技術です。遠くの領域では点群を粗く表示し、ユーザーが近づくにつれて詳細な点群データを表示することで、描画処理の負荷を軽減します。また、巨大な点群データを小さな単位に分割し、必要なデータのみを読み込むストリーミング技術も重要です。これは動画配信の仕組みに近く、ユーザーの視点に応じて必要なデータを逐次読み込むことで、巨大なデータでもスムーズな表示を実現します。

これらの技術には、空間インデックス(Octreeなど)やデータ圧縮などのアルゴリズムが組み合わされており、端末のメモリ消費を抑えながら大規模点群データを効率的に扱うことが可能となっています。その結果、専用ソフトウェアや高性能PCを必要とせず、ブラウザさえあれば大規模な3次元データを閲覧できる環境が実現しました。タブレットやモバイル端末からのアクセスも可能であり、遠隔地からの現場確認や情報共有にも活用できます。

フォーラムエイトでは、UC-win/Roadで培った3次元可視化技術を基盤として、これらの技術をWeb環境へ拡張したシステム開発を進めています。

点群データと管理情報の統合

点群データのもう一つの重要な活用方法は、各種管理情報との統合です。

点群データに設備情報、防災情報、維持管理データなどを紐付けることで、3次元空間上で情報を統合的に把握することが可能になります。従来は図面や帳票などに分散していた情報を空間上で確認できるため、状況判断の迅速化や業務効率の向上が期待されます。フォーラムエイトのF8VPSプラットフォームと連携することで、設備データや管理情報を3次元空間上に重ね合わせて表示することが可能になります。設備の位置関係や周辺環境との関連性を直感的に理解できるため、インフラ維持管理の高度化に貢献します。さらに、タブレットなどのモバイル端末を利用することで、現場で情報の確認や更新を行い、その内容を即座に共有することが可能になります。これにより、現場と事務所の間でリアルタイムな情報連携を実現できます。

図2画像.jpg
図2 点群データと設備情報の統合管理

LiDAR計測と空間の可視化

ドローンやLiDARなどの計測機器を用いることで、広範囲の地形や構造物を3次元データとして取得することが可能です。

これらの点群データを利用することで、人が立ち入ることが困難な場所や広域の状況を3次元的に把握することができます。災害発生時の状況確認や被害範囲の把握など、防災分野でも活用が期待されています。

また、定期的に地形や環境を計測してデータを蓄積することで、環境変化の分析や将来的なシミュレーションにも利用することができます。

施工現場においても、LiDARセンサーなどを用いて施工状況を点群データとして取得し、ブラウザ上で確認することが可能になります。従来の監視カメラでは確認できない角度から現場を把握することができ、施工管理の高度化につながります。

さらに騒音計などのセンサー情報と連携することで、騒音の広がりや影響範囲を3次元空間上で可視化することも可能です。計測データの時系列表示や異常検知など、さまざまな応用が期待されています。

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図3 LiDAR計測データとの連携例

デジタルツインへの展開

点群データをWeb上で扱えるようになることで、現実空間のデジタル再現である「デジタルツイン」の構築がより容易になります。点群データに設備情報やセンサーデータ、運用情報などを組み合わせることで、都市やインフラの状態を3次元空間上で再現し、状況分析やシミュレーションを行うことが可能になります。

フォーラムエイトでは、UC-win/Roadによる3次元シミュレーション技術と、F8VPSによるWeb空間技術を組み合わせることで、点群データを活用したデジタルツイン環境の構築を進めています。これにより、インフラ維持管理、防災、都市計画など幅広い分野での活用が期待されています。

まとめ

本記事では、大規模な点群データをWebブラウザ上で可視化・活用する技術について紹介しました。

Webブラウザ技術の進化により、従来は専用ソフトウェアが必要だった点群データの活用が、より多くの環境で可能になりつつあります。

フォーラムエイトでは、UC-win/Roadで培った3次元技術とF8VPSを組み合わせることで、点群データを活用したデジタルツイン環境の構築を推進しています。

今後も3次元データを基盤としたインフラ管理・都市シミュレーション技術の開発を進め、社会インフラの高度化に貢献してまいります。

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