急に発表された解散総選挙は、自民党の圧勝という結果で終わりました。想像以上の圧勝だった一方で、野党第一党の中道改革連合(中道)の惨敗も想定外であったのではないでしょうか。
各種メディアでもすでに語りつくされていることではありますが、あまりに急な選挙であったため、政策論争というよりもイメージ戦略が勝敗を分けたとも言えます。
これまで空中戦は比較的苦手としていた自民党が中盤戦から投入してきた党(高市首相)のSNSは圧倒的な投稿数と同時に、多くの支持者や国民による再投稿やリアクションで大量に拡散されたこと、もともとの高市首相のSNS基盤も大きく働いたと言えます。
今回の結果を受けて、筆者の専門分野である非言語コミュニケーションの視点で検証してみましょう。
選挙におけるイメージ戦略の歴史
イメージ戦略と言えば、1960年の米国における大統領選挙でのジョン・F・ケネディとロバート・ニクソンの逸話が有名です。ラジオ放送では互角と言われていましたが、テレビ討論会でケネディが逆転したのです。
ニクソンがライトグレーのスーツに対して、ケネディは濃紺スーツを着用し、当時まだ白黒放送のため、ニクソンはボヤッとして疲れた印象だった一方、ケネディがメリハリのある若々しい印象を醸し出し、一気に優勢となったのです。
1950年代までは候補者の情報と言えば、街頭活動、ポスター、新聞くらいだったようで、とくに対面情報が重要だったと言えます。
1980年代に入り、プロの広告会社が選挙に本格参入したことで、イメージ戦略は米国に根付き、その後日本にも広がり、2001年以降では小泉純一郎元首相によるワンフレーズの象徴ワードが話題をさらいました。
その後、インターネットの普及によりオールドメディアと呼ばれるテレビだけではなく、各種SNSによって当事者本人の生の言葉が拡散され、トランプ大統領の例の通り、大きな影響力を与えるようになりました。
彼同様、高市早苗首相の場合も、今回の選挙における大ブレイクに至るための基盤をコツコツと投稿してきたと言えます。
今回の選挙はとくにSNSからアルゴリズム政治と化した、歴史的な大きな転換となったと言えます。(下表参照)

衆議院議員選挙2026における各政党のイメージを分析すると……
自由民主党は、高市早苗首相のリーダーシップ像を中心に据え、「総理大臣は高市かそれ以外か」という極端な対比戦略を展開したことが成敗を分けたとも言えます。
これにより有権者の「判断のしやすさ」を強調し、結果的に自民党支持に結びついたとの分析が出ています。かなりの予算を投じたともメディアでは報道されていますが、SNSでの拡散力は自民・高市陣営が他党を大きく上回り、影響力が高かったと言えます。
さらには、高市首相の人柄や発する言葉の人間味が人気を呼び、いわゆる“推し活型”のイメージ戦略につながり、拡散=大勝となりました。
一方、今回の衆院選の比例代表で一気に11議席を獲得し、勢力を拡大したチームみらい。お団子ヘアスタイルにTシャツ姿の代表安野貴博氏は、まさにお異端児的なビジュアル戦略ですが、既存政党がポピュリズム的な消費税減税を叫ぶ中、「消費税維持・社会保険料を引き下げ」という、痛みを伴いつつも可処分所得を直結させる政策を提示しました。
既存の政治手法に限界を感じていた層に対し、党首・安野貴博という個人のパーソナルブランディングを通じて、「彼らなら社会の停滞を解消できるかもしれない」という期待を抱かせた結果と言えます。
とくに注目したいのは、安野党首の纏うミントグリーンのイメージカラーです。これまでの政党は、紺や赤を用いるのが通例でした。強さをアピールする色です。
しかし、グリーン系というのは、「安心感」「平和」を象徴します。とくに「ミント」は「再生」のイメージを持ちます。まさに安野党首の話し方や、醸し出すイメージとマッチしています。
また、私の世代からみると、かつてのITエンジニアのイメージを踏襲しており、「変化」を示唆するイメージに繋がったと言えます。
そのほかの参政党、国民民主党はこれからのイメージから変化はなく、中道は急な合併によりイメージ戦略に至る以前で終わってしまったと言えます。
言語と非言語の不一致がもたらす悪影響
筆者がことある度に書き下ろしていることですが、言語と非言語が一致していなければコミュニケーションは上手くいきません。
「君を頼りにしているんだよ!」と言葉で言っても、相手と目を合わせず、口を歪ませて話しているようでは、その言葉は相手に通じません。
というより、非言語の情報の方が優勢となり、「ああ、この人は私のことはどうでもいいんだ」と捉えられてしまいます。
これを「政策」と「イメージ」に当てはめるならば、政策で掲げていることがイメージとして表れている必要があります。
例えば、政策として「責任ある積極財政」と掲げるためには、強く前向きなイメージが必要です。
昨年に発表された高市首相の自民党ポスターは、赤と紺のスーツを纏う高市首相が真っ白な背景に浮かび、強さと誠実さを感じさせるものでした。
政策(言語)とイメージ(非言語)は一致しています。
参政党の情熱を感じさせるオレンジ、国民民主党の親しみのある黄色は、それぞれの政策に合っています。
また、先ほど言及しましたチームみらいのミントグリーンもそうです。
では、中道の空を想起する青はどうでしょうか。「生活者ファースト」と書かれたポスターは選挙の1週間前に発表されました。
もともと、立憲民主党も、公明党もイメージカラーは青ですから違和感はないはずですが、なぜかそのイメージを定着するに至りませんでした。
言語である政策が見えず(伝わらず)、非言語(ポスター)だけが独り歩きしてしまい、軸となる価値が鮮明でなかった、つまりラベルが先行してしまった結果と言えます。

イメージ戦略は、どうあるべきか?
コミュニケーションは言語と非言語が一致していることが重要であるように、ブランドの核となる理念の一貫性が第一の重要ポイントです。
つまり、「何を最優先するか」を一本化して、すべての政策はその軸で再編集します。
そのうえで、ロゴ・イメージカラー・言葉遣い・候補者のトーンを統一します。
イメージは政策の翻訳装置だと考えることです。
次に物語が必要です。ストーリー設計は、箇条書きでは伝わりません。
「今何が問題か」「この党ならどう変わるか?」「5年後の暮らしはどう変わるか」を一本の物語で示します。
バラク・オバマ氏の掲げたような「HOPE」「CHANGE」という未来像の提示が物語として必要なのです。
そして、最後にメディア適応力が求められます。
SNS時代からアルゴリズム時代に突入した今、共感と拡散と同時に、表示量と感情設計を考えることです。
高市首相の成功例のように、個人ブランドの確立とともに、それを短尺動画で示すとともに、長尺動画で中身を説明するという二重構造が大切となります。
政治におけるイメージ戦略とは、政策を“信頼できる未来像”に変換する作業と言えるでしょう。
【参考文献】
東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/935283?display=b
読売新聞政党のキャッチフレーズからみえる戦略、有権者の心をつかむ言葉は?
https://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/20241019-OYT1T50090/