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ACCS寄稿記事

著作権に加えて
気を付けたい権利について①

一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)
ACCS HP
一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会は、デジタル著作物の権利保護や著作権に関する啓発・普及活動を通じて、コンピュータ社会における文化の発展に寄与しています。オービックビジネスコンサルタント(業務ソフトウェア開発・販売)の創業者・代表取締役社長 和田成史氏が理事長を務め、多数のソフトウェア開発企業が会員として所属。フォーラムエイトも、同協会の活動に賛同して2022年に入会し、ソフトウェアの地位向上のため活動を継続しています。


著作権以外にも注意すべき権利とは

これまで、主にビジネスの場面において、著作権侵害とならないために気をつけるべき点について解説してまいりました。しかし、コンプライアンスの観点では、気をつけなければいけないことは著作権だけではありません。

そこで今回からは、プレゼンテーション資料や広告などの制作時、WebサイトやSNSで情報発信する際に、著作権に加えて気をつけるべき権利について概説いたします。

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肖像権

肖像権とは、一般人が自身の肖像を撮影されたり公表されたりしない権利のことです。肖像権は、著作権のように法律で明文化された権利ではなく、裁判(判例)によって認められている権利です。

肖像権に関し、昭和44年の最高裁判所の判決では、憲法13条を根拠として「個人の私生活上の自由の一つとして、何人も、その承諾なしに、みだりにその容ぼう・姿態を撮影されない自由を有する」として肖像権を認めました。

さらに、平成17年の最高裁判決では、「ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、被撮影者の社会的地位、撮影された被撮影者の活動内容、撮影の場所、撮影の目的、撮影の態様、撮影の必要性等を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決すべきである」として、損害賠償が認められる肖像権侵害の判断基準を示しました。

……聞き慣れない言葉が多く、少し難しく感じられますね。肖像権は、法律として権利の内容や認められる基準が明確に定められていないため、個別の状況に応じた判断が必要となります。

では、写真を撮影して人が写り込んでいると、すべてが肖像権侵害になるかといえば、必ずしもそうではありません。例えば、公共のスペースで背景として人が写り込んでしまったような場合には、肖像権侵害にはなりづらいと考えられます。一方、特定の個人を判別できる形で撮影・公開する場合には、肖像権の利用について本人の同意を得ることが不可欠です。

肖像権は著作権とは別の権利ですので、たとえ著作権の利用許諾を受けた写真であっても、人物が写っている場合は、別途肖像権について確認する必要があるのです。

パブリシティ権

肖像権に似た権利として「パブリシティ権」があります。これは、有名人がその氏名や肖像を商業的に利用する権利のことです。

パブリシティ権について、平成24年の最高裁判決では、「人の氏名、肖像等(以下、併せて『肖像等』という。)は、個人の人格の象徴であるから、当該個人は、人格権に由来するものとして、これをみだりに利用されない権利を有すると解される。そして、肖像等は、商品の販売等を促進する顧客吸引力を有する場合があり、このような顧客吸引力を排他的に利用する権利(以下『パブリシティ権』という。)は、肖像等それ自体の商業的価値に基づくものであるから、上記の人格権に由来する権利の一内容を構成するものということができる」とされました。

その上で、「肖像等を無断で使用する行為は、①肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用し、②商品等の差別化を図る目的で肖像等を商品等に付し、③肖像等を商品等の広告として使用するなど、専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とするといえる場合に、パブリシティ権を侵害する」と判示しました。パブリシティ権も具体的な法律の条文はなく、憲法13条を根拠として認められた権利です。

つまり、顧客を引きつける力のある有名人の氏名や肖像を、商売や広告で無断利用することはパブリシティ権侵害となります。氏名もパブリシティ権で保護されていますので、「〇〇さんが愛用しています」といった文字による広告も、本人または所属事務所等の許可を受けなければなりません。

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商標権

商標権とは、商品やサービスに付ける商標(ネーミングやロゴマークなど)を財産として守る権利です。

商標は、自社が取り扱う商品・サービスを他社のものと区別するために使用されます。単なる識別方法としてだけでなく、自社の営業努力によって商品やサービスに対する消費者の信用を積み重ねることにより、商標にはブランドイメージが備わっていきます。そして、特許庁に登録した商標には「商標権」が発生します。

偽ブランド品を製造・販売したりすれば当然商標権侵害となりますが、一方で、商品紹介やレポート等で商標を使うこと自体は、原則として商標権侵害にはならないと考えられます。ただし、そのブランドや企業の価値をおとしめるような利用方法や、あたかも企業公式であるかのように誤認させるような利用は避けなければなりません。

また、企業によっては製品名やロゴマーク等の利用に関するガイドラインを定めている場合がありますので、その際はガイドラインを遵守しましょう。

なお、不正競争防止法では、商標登録の有無に関わらず、他人の商品・サービスと混同させるようなブランド名やロゴマークを使用する行為や、他人の有名なブランド名やロゴマークを不当に利用することを禁じています。

ですので、登録の有無に関わらず、他人の商標については敬意を持って慎重に取り扱うことが求められます。

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おわりに

今回は、肖像権、パブリシティ権、商標権侵害とならないための注意点をまとめました。次回は、これら以外の権利やその他の注意点について解説いたします。

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